140文字お題１～５
• 01：宛先のない手紙
• 02：愛されるのに臆病すぎて、
• 03：どうにかなってしまいそう
• 04：花束を抱えて
• 05：結婚しちゃおっか
140文字お題６～10
• 06：関白亭主
• 07：愛の逃避行
• 08：恋、拾いました
• 09：指きり（２回目）
• 10：隣との距離

01：宛先のない手紙

『拝啓、春寒の候いかがお過ごしでしょうか』
小太郎は筆を止め、窓の外へ視線を向けた。梅の蕾がほころび始めているのが見える。
「うぬが楽しみにしていた花、もうすぐ咲くぞ。世話をする者が居なくなって一時は枯れかけたが。…クク、座興よな」
再び筆を走らせる。
『こちらは変わりありません』

02：愛されるのに臆病すぎて、

道端に怪我をした猫が蹲っている。
思わず手を差し伸べた途端、牙を剥き爪を出した。俺は背後に居た小太郎に転がされ事なきを得たが起き上がるともう、その姿はない。
「余計気の毒しちまったな」
「臆病になっているのだ。安易に手を出すものではない」
「後悔したか？」
「なんの話だ」
「…子犬の話だよ」

03：どうにかなってしまいそう

部屋を訪れた小太郎が後退り障子を閉じた。
「臭い」
「！？香を焚いただけだぞ」
「うぬの鼻どうなっているのだ」
そこまで言われては仕方ない。久々の夜が台無しだが、換気し部屋が冷え切った頃に小太郎を呼び戻した。
「余計な気ぃ利かすもんじゃねえな」
「期待されていたのは良く分かった」
「ド阿呆」

04：花束を抱えて

オバケさんと約束していた朝、熱が出た。僕は布団から起き上がる事が出来ず外へ出られなかった。約束を反故にされて怒っていないだろうか…そう思いながら眠りに落ちた。
「夢、か」
子供の頃の夢…は、夢ではなかった。
「うぬは変わらぬな」
そこに立っていたのは色とりどりの花を手にした小太郎だった。

05：結婚しちゃおっか

『あぁ、また面倒事を抱え込んじまった。なんだって俺は肝心な所で押しに弱いんだ』
「人の心中を読むんじゃねえよ」
机に突っ伏していた氏康が顔をあげた。
「図星か？」
「あぁ、もう何もかも投げ捨てちまいてぇ」
「それで、我に養われたいのか？」
「…そうしちまおっか」
「相当に消沈しているのだな」