140文字お題１～５
• 01：夢だったらよかったのに
• 02：ありふれた日常の中の幸せ
• 03：最後の言葉
• 04：大人になって、それからどうするの
• 05：新婚ごっこ
140文字お題６～10
• 06：自惚れないで
• 07：一行の空白
• 08：箝口令
• 09：神様なんていない
• 10：絶対絶命
140文字お題11～15
• 11:嘘、だったりして
• 12：手だけつないで
• 13：最大級の口説き文句
• 14：世界で一つだけの願い事
• 15：目を閉じて、三秒
140文字お題16～20
• 16：正直に申し上げます
• 17：アンビバレンス
• 18：届かない本当
• 19：優先順位
• 20：幸せになってよ
140文字お題21～25
• 21：誰も欲しくない
• 22：若いときには無茶をしとけ
• 23：きっとそれで正解
• 24：それは寒い夜だった。
• 25：わかりやすいけれど、わかりにくい
140文字お題26～31
• 26：夢だけの世界
• 27：隣の人
• 28：愛してる、って言ったら満足？
• 29：誰にも渡さない
• 30：本物と偽物
• 31：物仕掛けと色仕掛け

01:夢だったらよかったのに

残忍な忍びにとて大切なものはある。大切なものを大切にしたい、人並みにそう思う心もある。だが、本能がそれを妨げる時がある。残忍さが殺しきれない瞬間が確かに存在するのだ。
…夢だったら良かったのに。気を失った氏康を前に思った。
「すまぬ、子犬」
触れた頬の温もりが我に現実を知らしめる。

02：ありふれた日常の中の幸せ

伊達の小僧どもの大阪城急襲により戦は終わった。
後始末という仕事はあるが穏やかな日々が当たり前になってどれくらい経つだろう。釣り糸を垂れていても以前の様に頭を悩ませることもない。それよりも。
「なんだ」
「いや、なんでもねぇ」
戦がなくなれど隣に在る温もりにどうしようもなく満たされる。

03：最後の言葉

夢の中でオバケさんに再会した。
幼い日、俺と契約を結んでくれた「風魔小太郎」だ。俺はオバケさんに向かって走り出す。走って走って…走っているのに何故だか距離が開いて。
「オバケさん！」
必死に声を振り絞り叫んだ時、揺り動かされて目が覚めた。
…最後の言葉が思い出せない。涙が頬を伝っていた。

04：大人になって、それからどうするの

臆病者は死んだ方がいい。その考えは小太郎と契約してもすぐには消えなかった。
「うぬはまだ子ども故それしか見えぬであろうが、いずれ考え方も変わろう。子犬よ、焦らずとも人は老いて死ぬのだぞ」
「それは…そうだけど」
「それが人の正しい在り方よ」
何故だろう。オバケさんの方が寂し気に見えた。

05：新婚ごっこ

「お…オバケさん、僕と新婚ごっこして」
「なんだ、それは」
「新婚の夫婦は一緒のお布団で寝るって聞いた」
先刻まで子犬が読んでいた草紙が枕元に置かれている。表紙に小田原怪談と書かれているのが見てとれた。
「クク…要らぬ勇気は身を滅ぼすもの。食われても知らぬぞ」
「だから一緒に寝てってば！」