140文字お題１～５
• 01：夢だったらよかったのに
• 02：ありふれた日常の中の幸せ
• 03：最後の言葉
• 04：大人になって、それからどうするの
• 05：新婚ごっこ
140文字お題６～10
• 06：自惚れないで
• 07：一行の空白
• 08：箝口令
• 09：神様なんていない
• 10：絶対絶命
140文字お題11～15
• 11：嘘、だったりして
• 12：手だけつないで
• 13：最大級の口説き文句
• 14：世界で一つだけの願い事
• 15：目を閉じて、三秒
140文字お題16～20
• 16：正直に申し上げます
• 17：アンビバレンス
• 18：届かない本当
• 19：優先順位
• 20：幸せになってよ
140文字お題21～25
• 21：誰も欲しくない
• 22：若いときには無茶をしとけ
• 23：きっとそれで正解
• 24：それは寒い夜だった。
• 25：わかりやすいけれど、わかりにくい
140文字お題26～31
• 26：夢だけの世界
• 27：隣の人
• 28：愛してる、って言ったら満足？
• 29：誰にも渡さない
• 30：本物と偽物
• 31：物仕掛けと色仕掛け

16：正直に申し上げます

「小太郎が寝込んでる？」
報告に訪れた風魔の忍びは、頭領の不在をそう説明した。
「本当はまたどっかの戦場掻き回しに行ってんじゃねえのか」
「いえ、その様な事は」
「正直に言ってみろ！」
少し声を荒げてみる。忍びは畏まった様子だ。
「昨晩…氏康様が散々せがんで寝かせてくれなかったので眠い、と」

17：アンビバレンス

「俺たちの代で乱世を終わらせたい」
そう願う男が我を傍に置いている。
「世に混沌を」
それを業だと言う男が俺の為に力を貸してくれている。
それぞれの願いと想いは相反していて、他人はそれを矛盾というのだろう。矛盾していようが、間違っていようが、……共に在ることに理由は要らない。

18：届かない本当

「てめぇの中身は代替わりしてんだろうが」
氏康がそう言った時、答えは返さなかった。風魔の頭領は代々小太郎の名を襲名する。
我も小太郎、先代も小太郎。違なる者で同じ存在。人の子には理解し得ない在り方だろうとも思う。我は我だ、と伝えたところで…やはり届かぬであろうな。それでも我は…。

19：優先順位

国の事、民の事、家族の事。氏康の毎日は考えることに溢れている。
書面と向きあっている時は元より、釣りをしている時も、食事をしている時も、頭の中には考え事が蔓延っている。
「顔色が悪いぞ」
「そうか？」
それだけ考える事の出来る男なのに、自分の事だけが抜け落ちているのには気付きもしない。

20：幸せになってよ

小太郎が遠くを見つめている。本当に遠い景色を眺めているのか、はたまた考え事に暮れて何も見ていないのか、俺には分からない。ただ、その眼差しが寂しげに見えることだけは昔から気になっていた。
小太郎には遠い未来が視えているのかもしれない。だから。
「…おい」
こっちを見てろと引き寄せる。