140文字お題１～５
• 01：最初から最後まで
• 02：それ以上は許さない
• 03：あなたと一緒にいたいんだもん
• 04：逃がしはしない
• 05：貴方の心臓が欲しい
140文字お題６～10
• 06：幸せにするよ
• 07：愛してみろよ
• 08：しゃらっぷ、きすみー！
• 09：ハッピーエンドの来ない悲恋こそ美しい
• 10：だいたいそんなかんじ
140文字お題11～15
• 11：好きにならないはずがない
• 12：いつもの癖
• 13：君という名の
• 14：足して割って、ちょうど
• 15：痛い
140文字お題16～20
• 16：忘れられた指輪
• 17：甘やかせる権利
• 18：残された時間
• 19：頑なに拒む両手
• 20：もう一度、恋をしよう
140文字お題21～25
• 21：境界線の引き方
• 22：50/50
• 23：例外的に
• 24：だいたいあいつのせい
• 25：もしも魔法が使えたならば
140文字お題26～31
• 26：オフレコ
• 27：目を閉じれば
• 28：全部全部、君のせい
• 29：どうにかなってしまいそう
• 30：約束破り
• 31：指切り

26:オフレコ

氏康が幼少の頃から今に至る迄の間、我が共にあった記憶の全てをどの様にして次代の小太郎に伝えれば良いだろうか。時折考える。本当に伝えるべきだろうかと。
我は近付き過ぎた。我にとっては愛しい時の流れも次代の小太郎には枷となるかもしれぬ。それでも残しておきたい。風魔が得た、離れ難きもの。

27：目を閉じれば

陽だまりの中でする昼寝なんてのは平穏以外の何でもねぇ。風の音や草木の匂い、目を閉じていても瞼の裏に降り注ぐ陽の光の温かさ。何もかもが心地良くて本当に寝ちまいそうになる。が、不意に目の前が暗くなった。そして柔らかな感触が唇に触れる。
「おい、邪魔するなよ」
「クク、狸寝入りであったか」

28：全部全部、君のせい

自分のくしゃみで目が覚めた時、既に体が不調を訴えていた。変な夢を見て、火照った体を冷やそうと布団を押し退けた。そこまでは覚えているが…そのまま寝ちまったって事だ。
「この季節に何も掛けずに寝るとはな」
呆れ顔の小太郎を思わず睨む。
「クク、我のせいか？」
ばつが悪くなって視線を逸らした。

29：どうにかなってしまいそう

「目も合わせぬとは一体どんな夢を見ていたのやら」
するりと首筋に手を這わされ、飛び上がらんばかりに驚いた。熱のせいか触れられるだけでゾワゾワした感覚が体を駆け抜ける。
「氏康」
「ひっ…」
耳元で名を呼ばれ後ろめたさに息が詰まる。
「少し熱が高いな」
低く囁く声にどうにかなってしまいそうだ。

30：約束破り

「触るな。手が…冷てぇ」
失態を見せる前に牽制しておこう、そう思った。小太郎は暫く自分の手を見た後、分かったと答えたが、すぐに手を伸ばして来て浴衣の袷を引っ張り始めた。
「おい！」
「着替えよ」
「触るなって言ったろ」
「直に触ってはおらぬ」
あぁ言えばこう言う小太郎に口で勝てた試しはない。

31：指切り

暖かくして寝床に入り直すと小太郎はよく出来ました、と言い腰を上げた。
「今度は布団を撥ね退けぬ様にな」
「暇だ。ここに居ろよ」
「我は忙しい…が、一仕事終えたら戻ろう」
「あぁ」
不意に懐かしさを覚え、布団から指を覗かせ約束をせがむ。
「先の約束を破ってしまうぞ」
「いいさ」
「我が侭な子犬め」