140文字お題１～５
• 01：僕の居場所
• 02：長く一緒にいた影響
• 03：世界の終わりに
• 04：共犯者の笑み
• 05：三時の雨宿り
140文字お題６～10
• 06：唯一の
• 07：君とならできる
• 08：上手な甘やかし方
• 09：この、リア充が
• 10：図書室の猫
140文字お題11～15
• 11：人生で一番
• 12：善意の裏返し
• 13：ご機嫌取りも楽しみのひとつ
• 14：多分上手く笑えていない。
• 15：言うと思った
140文字お題16～20
• 16：君の最期に
• 17：ずるい人
• 18：愛される条件
• 19：おいていかないで
• 20：おさえた首元
140文字お題21～25
• 21：見ないふり、見えないふり
• 22：美しい終わり方
• 23：自分のモノには名前を書きましょう。
• 24：自分だけ知ってればいい
• 25：No thank you
140文字お題26～31
• 26：幸せにはできないけれど
• 27：いえない我儘
• 28：一番厄介な存在
• 29：きっと大丈夫
• 30：受け止めてくれるのはあなただけ
• 31：見えないサイン

06:唯一の

冷たい雨に全身が凍えていた。混沌という名の闇は時折ひどく我を疲弊させる。立ち尽くしながら感じるのは無限の虚無。見上げた空は広く、暗く、遠い。だが我は風魔、吹き荒ばねばならぬ。
重い足の向いた先は氏康の寝所だった。引き寄せられる様に傍へ寄ると寝顔を覗き込む。ぽたり、と雨の雫が垂れた。

07：君とならできる

某は北条氏綱。近頃、風魔の頭領が息子である伊豆千代丸と急速に距離を縮めているとの報を受け、心配で様子を伺っている。
「僕、剣術の稽古嫌だよ」
「そうか。子犬が稽古している間に団子でも作って来ようかと思っていたが、ではまたにするか」
「え！ う、じゃあ頑張る」
…何故だろう。とても寂しい。

08：上手な甘やかし方

「利き酒をせよ」
突然机の上に猪口を置かれ、振り返ると小太郎が盆を片手に立っていた。
「今そんな気分じゃ…」
「猪口がそれしかない。全て飲むのだぞ」
一方的に酒を注がれ、仕方なく飲み干すと感想を言う前に別の酒を注がれた。次第に異様な酔いが回り始め口が滑る。
「クク…酔っ払いは愚痴るものよ」

09：この、リア充が

「お館様があたしをお茶会に誘ってくれるなんて、またお茶菓子でも貰い過ぎちゃったんですか？」
「察しがいいな。かみさんの実家からの茶菓子と、子どもらが嫁いだ先からの茶菓子に、今度は小太郎が作ってくれた団子が重なっちまってよ」
「へぇ…。ていうか、小太郎が団子！？」
「氏康、茶が入ったぞ」

10：図書室の猫

幼い頃から読書家だった。武芸の鍛錬をするよりも書院に篭っている方が好きで、読みかけの書を抱えたまま丸まり眠る姿は子猫の様だった。
「うぬは図体が大きくなっても変わらぬな」
新築された書院で書簡を広げたまま、転寝している氏康を見て思う。
「獅子とて猫科の生き物か。寝顔は無邪気なものよ」