140文字お題１～５
• 01：僕の居場所
• 02：長く一緒にいた影響
• 03：世界の終わりに
• 04：共犯者の笑み
• 05：三時の雨宿り
140文字お題６～10
• 06：唯一の
• 07：君とならできる
• 08：上手な甘やかし方
• 09：この、リア充が
• 10：図書室の猫
140文字お題11～15
• 11：人生で一番
• 12：善意の裏返し
• 13：ご機嫌取りも楽しみのひとつ
• 14：多分上手く笑えていない。
• 15：言うと思った
140文字お題16～20
• 16：君の最期に
• 17：ずるい人
• 18：愛される条件
• 19：おいていかないで
• 20：おさえた首元
140文字お題21～25
• 21：見ないふり、見えないふり
• 22：美しい終わり方
• 23：自分のモノには名前を書きましょう。
• 24：自分だけ知ってればいい
• 25：No thank you
140文字お題26～31
• 26：幸せにはできないけれど
• 27：いえない我儘
• 28：一番厄介な存在
• 29：きっと大丈夫
• 30：受け止めてくれるのはあなただけ
• 31：見えないサイン

21:見ないふり、見えないふり

氏康の鎖骨近くに朱い痕がついている。我がつけたものではない。だとすれば子犬の言う「愛しのかみさん」だろうか。
真偽はどうあれ、これから来客があると言っていた筈。あまり良い印象はないだろう。無言のまま腰に巻いていた布を掛けてやった。
「何のつもりだ」
「似合うぞ」
「明らかに合ってねぇ！」

22：美しい終わり方

「色付いて地に落ちて…綺麗なもんだな」
穏やかな昼下がり。寝転がり、紅葉した落葉樹を見上げてみる。葉は氏康の上にも一枚、二枚と落ちてきた。
「埋もれてしまうぞ」
「それも悪かねぇなあ」
「…気に入らぬ」
途端に強風が吹き荒れ、
「！」
目を開けると葉は全て飛ばされていた。
「…おい」
「似合わぬ」

23：自分のモノには名前を書きましょう。

「氏康、まじないをしてやろう」
戦に出る前、遠方へ出立する前。小太郎はそう言い、俺の背中に何かを記す。指先で文字をなぞるだけの簡単なまじない。幼い頃からの習慣の様なもので変に思う事はなかった。だが気になる事はある。
「なぁ、これいつも同じ字だよな。なんて書いてるんだ？」
「…秘密だ」

24：自分だけ知ってればいい

「オバケさん」という呼び名。今思えば上手いこと言ったものだと思う。
自分が既に隠居しているのだ。あの時、頭を撫でてくれた風魔の頭領が代替わりしていない筈がない。見た目が変わらないからといって気付かない訳はない。是ほど傍に居て騙せるものか。
でも、そんな事は俺だけが知っていればいい。

25：No thank you

オロチ界に飛ばされて数ヶ月。氏康は変貌した小田原城でぼんやりしていた。
「暇そうだな」
「戦いたい訳じゃねえが、こう待機させられてるだけってのは暇だな」
戦は膠着状態。
けれど出歩くことは出来ないし、日常していた仕事もない。
「我が大人の遊びでもしてやろう」
「結構だ。てめぇはぶれねぇな」