※最中の話です。
苦手な方は読まない様お気をつけください。



「…んっ、…んぁっ……」

まるで意味をなさない言葉が零れ落ちているのを、ぼんやりと意識していた。
自分の声であって自分の声でないような、そんな喘ぎが突き動かされる度に漏れる。うつぶせの姿勢で、腰だけを抱え上げられている格好を気にしていたのは初めだけだった。
もう、何もかもどうでもいい。
熱い。
ただ、熱くて、苦しい。
体すべてが小太郎に支配されている様な、そんな錯覚に陥ってしまう。
だが、面倒くさい隣国事情も、注視しなければならない他国の侵攻も、戦で命を落としていった兵卒の数も…今だけは全て忘れていられた。
罰を与えられている様な苦しさと、それを凌駕する快感で頭の中はぐちゃぐちゃだ。与えられる刺激に溺れながら敷き布にしがみついているうちに、背後から圧し掛かっている小太郎の息遣いを耳元に感じた。

「氏康」

軽く頬を叩かれる感触に瞼を開けると、小太郎の顔がぼんやり映る。
いつもより上気した顔。少し乱れた息遣い。
生々しい存在を感じた途端に体の内がぞくりと震えた。

「っ…」

小太郎が僅かに呻く。

「もう、終わり…か？」
「この様に締め付けられては我とて保たぬ」
「だらしねぇな」

笑い飛ばしたつもりの声がひどく掠れている。
どれくらいの時間こうしているのかさえ、もう分からなかった。

「クク、望むならいくらでも…くれてやるぞ」
「ひっ…」

ズッ、と突き上げられて、込み上げる射精感が一気に増してくる。
その動きを止めようと必死にもがいた。

「ま、待て…っ」
「待てぬ」
「待てよっ！そっちが…、向きてぇ」

少しの間があって、小太郎の動きが止まった。
そこからはあっという間だった。引き抜かれ、転がされたと思った瞬間、前を掴まれ小太郎が一気に押し入ってくる。

「ぐあぁっ…！」

深い。
きつく掴み止められたせいで達せなかった体が、がくがくと震えた。気が遠くなる様な息苦しさと熱に、悲鳴の様な息遣いだけが零れていく。

「は…、ぅあ……」
「これで良いな？」

すぐに動き出した小太郎に言葉を返す余裕はなく、ただ頷きながらしがみついた。こんなに力いっぱい抱かれるのも、抱きしめられるのも、小太郎以外には居ない。

早く達してしまいたい。
まだ終わりたくない。
もっと欲しい。

もどかしい焦燥と愛おしさに、腕を回し、脚を絡め、夢中でその体をかき抱いた。



あなたの体に、溺れる

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