02
翌日、小太郎は宣言どおり診療の終了間際に来院してきた。
「本当に来たんだな。毎日、毎日、よく来るな」
「風邪なのでな」
「あ、そう」
風邪だと言い張るから簡単な問診はする。
だがどこも悪くない患者に処置することはない。
「ま、俺は大丈夫だと思うぜ。じゃあお大事に」
今日もそう言い追っ払おうとすると、大きな紙袋を差し出された。
「うぬにこれを…」
「何だよ」
「昨日の礼にお裾分けだ。ではな」
小太郎はそれ以上しつこくはせず診察室を出て行った。
すぐに中を確認してみる。入っていたのは重箱だった。
蓋を開けてみると、中には見た目美味しそうな料理が詰まっていて、しかもまだ温かだった。
「三段もあるな。ったく、何を考えているんだか」
まだ間に合うだろうか。少し迷ったが追いかける事にした。
出入り口の扉を開けると冷たい風が吹き込み、身が縮こまる思いがする。
玄関前に停められる様になっている駐車場の出入口付近に、何故だか小太郎が座っているのが見えた。
「おい！一緒に食ってけよ。一人じゃ食いきれねぇ」
呼びかけると小太郎はまるで俺が追いかけてくることを分かっていた様に振り返り、愉快そうな笑みを浮かべた。
「もう中を見たのか」
言われてから、行儀の悪い事をした様でバツが悪くなったが引き返せない。
「悪いかよ。で、食ってくのか帰んのか、どっちだ！」
「無論、食っていく」