04
そんな小太郎との関係に変化が訪れたのは、年が明け、１月も半ばに差し掛かった頃だった。
「おかしい…」
日曜日、いつもの様に階下の診察室へ行こうとして気がついた。
体がだるい。
そういえば土曜日の診療を終えた時、少し悪寒がしていた気がする。風邪でもひいたのだろうか。いや、それよりも…。
嫌な予感がして自ら検査してみた結果は陽性。間違いなくインフルエンザだった。
「なんてこった」
内科の医院なのだ。ウイルスの類は身近に溢れている。気をつけていても触れてしまうこともある。まして今はインフルエンザウイルスが猛威を振るっている時分。
失態だった。
個人の開業医がインフルエンザでは休業するしか手立てはない。
幸いといえば、あまり熱が高くないことだろうか。
来週予約中の患者に連絡を入れ、出入口の扉に休診の知らせを貼り出し、カルテだけでも片付けてしまおう。そう思いながら机に向かう。
「いつ貰っちまったのかな…」
昨日小太郎が来院した時、「少し顔が赤くないか」と言っていたことを思い出した。
あの時、既に熱があったのかもしれない。
だが、予防接種だってしている。こうして今も動けているのだから酷い事にはならないだろう。
インフルエンザと言えど、ウイルスを保持しているだけで高熱が出ない場合もある。どちらにせよ、休むしかないのだ。
（今晩は早めに床につくことにしよう）
そう高を括っていたものの、夜になると微熱は高熱に変わっていった。